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転職サービスは法律上3種類に分かれる|職業紹介・募集情報等提供・労働者派遣の違いと「求職者が無料で使える」理由
転職エージェント、スカウト型転職サイト、派遣は、法律上まったく別の事業区分です。職業安定法と職業安定法施行規則の条文にもとづいて、3つの区分の定義、許可制と届出制の違い、求職者が無料で使える根拠、そして「エンジニアは例外的に手数料を請求されうる」条文までを整理しました。
「転職エージェント」「スカウト型転職サイト」「求人サイト」「派遣」——これらは日常的にはまとめて“転職サービス”と呼ばれますが、法律上はまったく別の事業区分で、適用されるルールも、国への手続きも、お金の流れも違います。
この記事は、サービスの善し悪しを比べるものではありません。職業安定法(昭和22年法律第141号)と職業安定法施行規則の条文そのものを出典にして、区分の違いと、その違いが求職者にとって何を意味するかを整理したものです。編集部の実体験ではなく、法令の条文にもとづく整理として読んでください。
先に結論
- 転職サービスは法律上、大きく ①職業紹介 ②募集情報等提供 ③労働者派遣 に分かれる
- ①は許可制、②は届出制。求められる手続きの重さが違う
- 求職者が無料で使えるのは、サービス各社の親切心ではなく法律の条文による(職業安定法第32条の3第2項)
- ただし 「求職者から一切取れない」わけではない。省令が定める例外があり、その例外にITエンジニアが該当しうる
- 事業者が本当に許可・届出を受けているかは、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で誰でも無料で確認できる
1. 法律が定めている3つの区分
① 職業紹介
職業安定法第4条第1項は、職業紹介をこう定義しています。
この法律において「職業紹介」とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすることをいう。
(職業安定法第4条第1項)
ポイントは 「あつせん(斡旋)」 という言葉です。求人と求職の両方の申込みを受けて、あいだに立って雇用関係の成立を取り持つのが職業紹介です。いわゆる転職エージェントがこれに当たります。
同条第2項・第3項は、有料と無料を次のように分けています。
この法律において「無料の職業紹介」とは、職業紹介に関し、いかなる名義でも、その手数料又は報酬を受けないで行う職業紹介をいう。 この法律において「有料の職業紹介」とは、無料の職業紹介以外の職業紹介をいう。
(職業安定法第4条第2項・第3項)
ここで注意したいのが、「有料」は求職者から取るという意味ではないことです。誰からであれ手数料を受け取れば「有料の職業紹介」に当たります。実際には求人企業から受け取っているので、**求職者が無料でも、その事業は法律上「有料職業紹介」**です。求人票や公式サイトに「有料職業紹介事業許可」と書かれていて不安になる人がいますが、これは求職者に課金するという意味ではありません。
② 募集情報等提供
同じ第4条は、募集情報等提供も定義しています。条文は4つの類型を挙げていますが、要点は次の2方向です。
| 情報の向き | 条文上の類型 |
|---|---|
| 求人情報を求職者に届ける | 第1号(募集者の依頼を受けて提供)/第2号(依頼なしに収集して提供) |
| 求職者情報を求人企業に届ける | 第3号(求職者の依頼を受けて提供)/第4号(依頼なしに収集して提供) |
そして、次の一文が重要です。
この法律において「特定募集情報等提供」とは、労働者になろうとする者に関する情報を収集して行う募集情報等提供をいう。
(職業安定法第4条第7項)
つまり、**求職者の情報(プロフィール、職務経歴、スキルなど)を集めて動かすタイプのサービスは「特定募集情報等提供」**に分類されます。スカウト型の転職サービスは、多くがこちらに当たります。求職者が登録したプロフィールを企業が見てスカウトを送る仕組みは、まさに「労働者になろうとする者に関する情報を収集して行う募集情報等提供」だからです。
職業紹介と決定的に違うのは、「あつせん」をしない点です。情報を届けるところまでが役割で、雇用関係の成立を取り持つ立場には立ちません。
③ 労働者派遣
労働者派遣は職業安定法ではなく、労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律・昭和60年法律第88号) が扱います。職業安定法第4条第8項は、労働者供給の定義から労働者派遣を明示的に除外しています。
雇用契約を結ぶ相手が派遣元で、指揮命令を受けるのが派遣先という点が、①②と根本的に違います。①②はどちらも、最終的にあなたが雇用契約を結ぶ相手は求人企業そのものです。
2. 許可制と届出制——手続きの重さが違う
職業紹介は「許可」
有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
(職業安定法第30条第1項)
さらに同条は、申請書に事業所ごとの事業計画書の添付を求め、職業紹介責任者(第32条の14により選任)の氏名・住所の記載を義務づけ、許可にあたっては労働政策審議会の意見を聴くことまで定めています(第30条第2項〜第5項)。
特定募集情報等提供は「届出」
特定募集情報等提供事業を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、氏名又は名称及び住所その他の厚生労働省令で定める事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
(職業安定法第43条の2第1項)
「許可を受けなければならない」と「届け出なければならない」——この差がそのまま手続きの重さの差です。許可は審査を経て与えられるものですが、届出は要件を満たした届出が受理されるものです。
この届出義務は、2022年(令和4年)の職業安定法改正で新設されました。それ以前、求職者情報を扱うタイプの求人サイトは国への手続きが不要でした。比較的新しいルールであるという点は押さえておいて損がありません。
この違いが求職者にとって意味すること
許可制のほうが厳しい、だから安全、という単純な話ではありません。役割が違うので、期待していいことが違うというのが実務的な意味です。
| 職業紹介(エージェント) | 特定募集情報等提供(スカウト型) | |
|---|---|---|
| 国の手続き | 許可(第30条第1項) | 届出(第43条の2第1項) |
| 雇用成立の「あつせん」 | する | しない |
| 責任者の選任義務 | あり(職業紹介責任者・第32条の14) | 条文上の同種の規定なし |
| 紹介できない職業の制限 | あり(第32条の11) | — |
| 期待できること | 求人紹介、選考日程調整、条件交渉の仲介 | 企業との接点づくり、情報提供 |
「スカウト型に登録したのに、エージェントのように面接対策をしてくれない」という不満をときどき見かけますが、それは事業区分の役割の外にあるということです。
有料職業紹介では扱えない職業がある
意外に知られていないのが第32条の11です。
有料職業紹介事業者は、港湾運送業務(略)に就く職業、建設業務(略)に就く職業その他有料の職業紹介事業においてその職業のあつせんを行うことが当該職業に就く労働者の保護に支障を及ぼすおそれがあるものとして厚生労働省令で定める職業を求職者に紹介してはならない。
(職業安定法第32条の11第1項)
港湾運送業務と建設業務は、有料職業紹介では紹介できません。 ITエンジニアの転職には直接関係しませんが、「エージェントがあらゆる求人を扱える」わけではないことを示す条文です。
3. 「求職者は無料」の法的な根拠
転職サービスの多くが求職者に無料である理由は、条文に書いてあります。
有料職業紹介事業者は、前項の規定にかかわらず、求職者からは手数料を徴収してはならない。
(職業安定法第32条の3第2項本文)
原則として、有料職業紹介事業者は求職者から手数料を取れません。 「無料だからサービスの質が低いのでは」という心配をする人がいますが、無料であること自体は事業者の判断ではなく法律の要請です。
では事業者はどこから収益を得ているのか。同条第1項が定めています。
第30条第1項の許可を受けた者(以下「有料職業紹介事業者」という。)は、次に掲げる場合を除き、職業紹介に関し、いかなる名義でも、実費その他の手数料又は報酬を受けてはならない。 一 職業紹介に通常必要となる経費等を勘案して厚生労働省令で定める種類及び額の手数料を徴収する場合 二 あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表(略)に基づき手数料を徴収する場合
(職業安定法第32条の3第1項)
第1号が上限制手数料、第2号が届出制手数料と呼ばれるものです。
上限制手数料の実際の額
第1号の「厚生労働省令で定める種類及び額」は、職業安定法施行規則の別表(第20条関係)に具体的な金額で書かれています。
| 種類 | 手数料の最高額 | 誰から徴収するか |
|---|---|---|
| 受付手数料 | 求人の申込み1件につき 710円(免税事業者は660円) | 求人者 |
| 紹介手数料 | 支払われた賃金額の 100分の11(免税事業者は100分の10.3) | 求人者または関係雇用主 |
| 紹介手数料(期間の定めのない雇用契約で6か月超雇用された場合) | 6か月間の賃金額の100分の11 または 臨時・3か月超ごとの賃金を除いた額の 100分の14.8(免税事業者は100分の13.9)のいずれか大きい額 | 同上 |
出典:職業安定法施行規則 別表(第20条関係)。
実務で使われているのは第2号のほう
一方、第2号の届出制手数料には、条文上の上限額の定めがありません。厚生労働大臣に手数料表を届け出れば、その表にもとづいて徴収できます。ただし、歯止めがないわけではなく、同条第4項が変更命令の規定を置いています。
厚生労働大臣は、第1項第2号に規定する手数料表に基づく手数料が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該有料職業紹介事業者に対し、期限を定めて、その手数料表を変更すべきことを命ずることができる。 一 特定の者に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき。 二 手数料の種類、額その他手数料に関する事項が明確に定められていないことにより、当該手数料が著しく不当であると認められるとき。
(職業安定法第32条の3第4項)
「年収の30〜35%」といった転職エージェントの手数料水準の話は、この第2号(届出制)の枠組みの中の運用の話であって、法律が30%と決めているわけではありません。この点は混同されがちなので、条文の構造として押さえておくと理解が正確になります。
4. ここが一番見落とされている——ITエンジニアは例外に該当しうる
第32条の3第2項には、ただし書きが続きます。
ただし、手数料を求職者から徴収することが当該求職者の利益のために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、同項各号に掲げる場合に限り、手数料を徴収することができる。
(職業安定法第32条の3第2項ただし書)
その「厚生労働省令で定めるとき」の中身が、職業安定法施行規則第20条第2項です。条文が挙げている職業は5つです。
| 職業 | 施行規則第20条第2項の定義(要旨) |
|---|---|
| 芸能家 | 放送番組、映画、寄席、劇場等において音楽、演芸その他の芸能の提供を行う者 |
| モデル | 商品展示等のため催事に出席し、または新聞・雑誌等の写真等の制作の題材となる者、絵画・彫刻その他の美術品の創作の題材となる者 |
| 科学技術者 | 高度の科学的、専門的な知識及び手段を応用し、研究を行い、又は生産その他の事業活動に関する技術的事項の企画、管理、指導等を行う者 |
| 経営管理者 | 会社その他の団体の経営に関する高度の専門的知識及び経験を有し、経営のための管理的職務を行う者 |
| 熟練技能者 | 職業能力開発促進法第44条第1項に規定する技能検定のうち特級もしくは1級に合格した者が有する技能またはこれに相当する技能を有し、生産その他の事業活動において当該技能を活用した業務を行う者 |
「科学技術者」の定義に、ITエンジニアの業務は文言上あてはまりうるものです。条文は業種を限定しておらず、「高度の科学的、専門的な知識及び手段を応用し」「生産その他の事業活動に関する技術的事項の企画、管理、指導等を行う者」と書かれています。
ただし、該当すれば無条件に徴収できるわけではなく、2つの制限がかかります。
制限1:賃金の要件
条文は「当該紹介により就いた職業の賃金の額が厚生労働大臣の定める額を超える者に限る」としています。この額は厚生労働大臣の告示で定められており、就職後1年間で700万円が基準とされています。
制限2:徴収できる額の上限
就職後六箇月以内に支払われた賃金の百分の十一(免税事業者にあつては、百分の十・三)に相当する額以下の手数料を徴収するとき
(職業安定法施行規則第20条第2項)
これが実務的に何を意味するか
「転職エージェントは求職者側は必ず無料」と言い切ることは、法律上は正確ではありません。 高年収帯のエンジニア・研究職・管理職の紹介では、条文上、求職者からの手数料徴収が適法になりうる余地があります。
実際には、国内の大手転職サービスの多くが求職者無料をうたっており、この例外を使う事業者は限られます。ただし、**「無料と書かれていないサービスに登録するときは、手数料の定めを確認する」**という行動につながる知識です。第32条の3第3項は、手数料表を「職業紹介に関する役務の種類ごとに、当該役務に対する手数料の額及び当該手数料を負担すべき者が明らかとなる方法」で作成することを義務づけています(施行規則第20条第3項)。誰が負担するかは明示されているはず、というのが法の建て付けです。
5. 許可番号・届出番号の確認方法
許可番号の読み方
有料職業紹介事業の許可番号は、次の形式です。
13 - ユ - 310482
│ │ └── 事業者ごとの固有番号
│ └──────── 事業の種別(「ユ」=有料職業紹介)
└───────────── 都道府県コード(13=東京都)
労働者派遣事業の場合は「派」の記号が使われます。
誰でも無料で照会できる
厚生労働省が運営する 「人材サービス総合サイト」(https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp/)で、職業紹介事業者・労働者派遣事業者を検索できます。事業所名や許可番号から、**許可の有無・有効期間・事業所所在地**などを確認できます。
確認の手順
- 気になるサービスの公式サイトのフッターや「会社概要」「利用規約」で、許可番号(または募集情報等提供事業の届出)の記載を探す
- 記載された番号または会社名を、人材サービス総合サイトで検索する
- 掲載されている会社名・所在地が、公式サイトの記載と一致するかを見る
サービス名と運営会社名が一致しないことは珍しくありません。 ブランド名と法人名が違うケース、グループ会社が運営しているケースがあるため、照会するときは運営会社の正式名称で調べるのが確実です。
記載がない場合にどう考えるか
記載がないこと自体は、直ちに違法を意味しません。 職業紹介にも派遣にも当たらない純粋な求人情報の掲載であれば、許可番号は存在しないからです。ただし、そのサービスがあなたのプロフィール情報を集めて企業に届けるタイプであれば、特定募集情報等提供に当たり、第43条の2の届出の対象になります。自分が使おうとしているサービスがどの区分なのかを意識することが、確認の出発点になります。
6. 個人情報の扱いについて条文が求めていること
スカウト型のサービスを使ううえで、もう1つ知っておく価値があるのが第5条の5です。
公共職業安定所、特定地方公共団体、職業紹介事業者及び求人者、労働者の募集を行う者及び募集受託者、特定募集情報等提供事業者並びに労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者(略)は、それぞれ、その業務に関し、求職者、労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(略)を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、厚生労働省令で定めるところにより、当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。
(職業安定法第5条の5第1項本文)
**この義務は、職業紹介事業者だけでなく特定募集情報等提供事業者にも及びます。**条文が両方を並べて名指ししているためです。スカウト型サービスに職務経歴を登録するとき、目的を明らかにしないままの収集は法律が禁じているということになります。
同条第2項は「求職者等の個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない」とも定めています。
よくある質問
Q. 「有料職業紹介事業許可」と書いてあると、お金を請求されますか。 A. 「有料」は、誰かから手数料を受け取る職業紹介という意味です(第4条第2項・第3項)。求職者からの徴収は第32条の3第2項で原則禁止されています。実際の負担者は求人企業です。
Q. スカウト型サービスに許可番号がないのはなぜですか。 A. 職業紹介(あつせん)を行っていなければ、第30条の許可の対象ではないためです。求職者情報を収集して提供している場合は、第43条の2の届出の対象になります。許可と届出は別の制度です。
Q. エージェントとスカウト型は併用してよいですか。 A. 法律上、併用を禁じる規定は職業安定法にありません。ただし各サービスの利用規約は個別に定められているため、規約の確認は必要です。
Q. 手数料が「年収の30%」という話をよく聞きますが、法律で決まっているのですか。 A. 決まっていません。上限が条文で定められているのは第32条の3第1項第1号の上限制手数料(施行規則別表・賃金額の100分の11など)のほうです。よく言われる30%前後の水準は、同項第2号の届出制手数料の運用によるものです。
Q. 派遣とエージェントはどう違いますか。 A. 雇用契約を結ぶ相手が違います。職業紹介では、あなたは求人企業と直接雇用契約を結びます。労働者派遣では派遣元と雇用契約を結び、派遣先の指揮命令を受けて働きます。適用される法律も職業安定法と労働者派遣法で別です。
この記事の出典
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)/ e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141 (2026年8月31日閲覧)
- 第4条(定義)、第5条の5(求職者等の個人情報の取扱い)、第30条(有料職業紹介事業の許可)、第32条の3(手数料)、第32条の11(取扱職業の範囲)、第43条の2(特定募集情報等提供事業の届出)
- 職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)/ e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000012 (2026年8月31日閲覧)
- 第20条(法第32条の3に関する事項)、別表(第20条関係)
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)
- 厚生労働省 人材サービス総合サイト https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp/ (2026年8月31日閲覧)
条文の引用は上記e-Gov法令検索に掲載されている条文にもとづきます。表中の定義は、字数の都合により条文の一部を要約した箇所があります(該当箇所には「要旨」と明記しています)。制度は改正されることがあるため、実際の判断にあたっては必ず最新の条文と厚生労働省の公表資料をご確認ください。本記事は法令の一般的な解説であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。