エンジニアスカウト比較

※本記事にはプロモーションが含まれます

SES・社内SE・自社開発の年収と単価を公的データで整理|「3つの平均年収」が存在しない理由

SES・社内SE・自社開発の平均年収を比較した情報は多数ありますが、公的統計にこの3区分は存在しません。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)と令和7年賃金構造基本統計調査の実データ、およびフリーランスの単価公表値をもとに、実際に何が分かって何が分からないのかを整理しました。

公開日:2026年8月31日最終更新日:2026年8月31日

「SESは年収が低い」「自社開発は高い」「社内SEはワークライフバランスが良いが年収は伸びない」——この手の比較はよく見かけます。数字つきで断言している記事もあります。

しかし公的統計に「SES」「社内SE」「自社開発」という区分は存在しません。 したがって、この3つを横並びにした平均年収は、国の統計からは計算できません。世の中に出回っている「3区分の平均年収」は、各社が独自に集計したものか、出典が明示されていないかのどちらかです。

この記事では、実際に公的データから何が分かって、何が分からないのかを分けて整理します。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」に掲載されている令和7年賃金構造基本統計調査の数値を一次データとして使い、あわせてフリーランスの単価公表値も見ます。編集部の体験談ではなく、公開データの検証です。

先に結論

  • 3区分の平均年収は公的統計からは出せない。 統計の職業分類は「受託開発かどうか」「自社サービスかどうか」で分かれていない
  • そもそも3つは同じ軸で並ぶ概念ではない。 厚生労働省の定義では**SESは「契約形態」**であり、社内SEは所属先での役割、自社開発は事業モデル
  • job tagの職業別年収は、複数の職業で同じ数字が使い回されている。 これは不具合ではなく、元の職業分類が同じだから
  • 分かるのは「職種(設計側か実装側か)」による差と、フリーランスの単価水準

まず、公的データで実際に出ている数字

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」には、IT職種ごとに平均年収が掲載されています。以下は2026年8月31日時点の掲載値です。年収・平均年齢・労働時間は令和7年賃金構造基本統計調査、就業者数は令和2年国勢調査、有効求人倍率と求人賃金は令和7年度ハローワーク求人統計が出典と明記されています。

job tag上の職業 平均年収 平均年齢 月間労働時間 就業者数 有効求人倍率 求人賃金(月額)
システムエンジニア(基盤システム) 889万円 38.3歳 173時間 656,770人 2.24 35.3万円
プロジェクトマネージャ(IT) 889万円 38.3歳 173時間 656,770人 1.60 40.4万円
ITコンサルタント 889万円 38.3歳 173時間 656,770人 0.88 36.1万円
ヘルプデスク(IT) 609.8万円 42.2歳 160時間 207,400人 1.36 29.0万円
システムエンジニア(受託開発) 578.5万円 37.1歳 159時間 389,760人 2.54 36.4万円
システムエンジニア(Webサービス開発) 578.5万円 37.1歳 159時間 389,760人 2.54 36.4万円
プログラマー 578.5万円 37.1歳 159時間 389,760人 0.98 33.9万円

この表の読み方を間違えないでください

表をもう一度見てください。年収・平均年齢・労働時間・就業者数の列に、同じ数字が繰り返し出てきます。

  • 889万円/38.3歳/173時間/656,770人 → 3職業で完全に一致
  • 578.5万円/37.1歳/159時間/389,760人 → 3職業で完全に一致

これは誤りでも偶然でもありません。job tagの職業区分と、賃金構造基本統計調査の職業分類が1対1で対応していないためです。job tag自身が各ページに次の注記を載せています。

※「統計データ」は、必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではありません。各統計データで使用されている職業分類の詳細については職業分類対応表をご覧ください。

さらに各ページには、その職業がどの分類に紐づくかが明記されています。実際に確認できたものは次のとおりです。

job tag上の職業 紐づく職業分類(厚生労働省編職業分類)
システムエンジニア(受託開発) 「ソフトウェア開発技術者(WEB・オープン系)」等
システムエンジニア(基盤システム) 「ITシステム設計技術者」等
ヘルプデスク(IT) 「ITヘルプデスク」等

つまり 「システムエンジニア(受託開発)の平均年収は578.5万円」と書くのは、正確には「ソフトウェア開発技術者(WEB・オープン系)等の平均年収は578.5万円」という意味です。受託開発に限定して測った数字ではありません。

ここを踏まえずに引用している記事は非常に多いので、注意してください。 「受託開発SEは578.5万円、Webサービス開発SEも578.5万円」と並べて「どちらも同じくらい」と結論づけるのは、同じ数字を2回書いているだけです。

一方で、求人側の数字は職業ごとに違う

同じ表でも、有効求人倍率と求人賃金は職業ごとに異なります。こちらはハローワーク求人統計という別のデータソースで、職業ごとに集計されているためです。

  • システムエンジニア(受託開発):有効求人倍率2.54 / プログラマー:0.98
  • プロジェクトマネージャ(IT)の求人賃金は40.4万円で、掲載職業のなかで最も高い
  • ITコンサルタントは求人倍率0.88と、掲載職業のなかで最も低い

求人倍率の差は実務的に意味があります。 受託開発SEの2.54に対しプログラマーが0.98というのは、同じ賃金分類に属していても、採用市場での需給がまったく違うことを示しています。実装のみの求人より、設計を含む求人のほうが求人数に対する応募が少ない、と読めます。

そもそも3つは同じ軸で並んでいない

「SES・社内SE・自社開発」を横並びで比較する構図自体に無理があります。厚生労働省のjob tagは、IT業界を5分野に分類したうえで、次のように定義しています。

  • SIer:「一般企業や官公庁向けにシステムを構築したり、既存システムの保守を行う企業」
  • SES:「プロジェクト単位で特定の業務に対して技術者の労働を提供する契約形態

SESは「契約形態」です。 企業の種類でも職種でもありません。

整理するとこうなります。

用語 実際には何を指すか
SES 契約形態(技術者の労働を提供する契約)
社内SE 所属先での役割(事業会社の情報システム部門など)
自社開発 事業モデル(自社サービスを開発・運営している)

軸が3つとも違うため、論理的に重なります。自社開発企業の社内SEは存在しますし、自社開発企業がSES契約で人を受け入れることもあります。 「SESか自社開発か」は排他的な二択ではありません。

だからこそ、この3つで平均年収を比較した統計は作られていないのです。「SESの平均年収は◯◯万円」と断言している記事を見たら、その出典を確認してください。

もうひとつの物差し:フリーランスの単価

正社員の年収とは別に、業務委託の単価という物差しがあります。こちらはエージェント各社が実績を公表しています。

IT特化のフリーランスエージェントであるレバテックフリーランス(レバテック株式会社)の公表値は次のとおりです(2026年8月31日閲覧)。

項目 公表値 集計条件(公式の注記)
平均年収 881万円 2023年5月実績(首都圏案件に参画したWeb・アプリケーションエンジニア、週5稼働の場合
案件数 110,000件以上 2026年3月時点の掲載案件数
取引社数 10,000社以上 2023年7月時点
リモートでの参画率 91%以上 2023年4月〜2024年4月(フルリモート・リモート案件に参画したWeb・アプリケーションエンジニア、週5稼働の場合)
参画後の単価アップ 約2人に1人 2022年〜2024年5月(参画1年以上のWeb・アプリケーションエンジニア、週5稼働の場合)
検索できるスキル/言語 161 言語・フレームワーク・DB・OS・クラウドの総数

同サイトの案件検索では、単価レンジが「30万円〜」から「80万円〜」まで用意されています。掲載例では「PM/PMO・Salesforceプロジェクト推進支援」で月額85万円までの案件が確認できました。

正社員年収と単価を直接比べてはいけません

この881万円と、前掲の578.5万円・889万円を単純比較するのは誤りです。 条件がまったく違います。

  • 集計対象が違う:881万円は「首都圏・Web/アプリケーション・週5稼働」という限定条件つきの実績値。賃金構造基本統計調査は全国・全年齢が対象
  • 稼働前提が違う:週5稼働を前提とした年換算であり、案件が途切れた期間は考慮されていない
  • 費用負担が違う:業務委託は社会保険料の会社負担分、有給休暇、退職金、福利厚生がありません。額面が同じでも手元に残る額と保障は変わります
  • サービス提供元の公表値である:国の統計とは性質が異なります

「フリーランスなら881万円」と読むのではなく、「首都圏でWeb系の案件に週5で入り続けられた人の実績値」と読んでください。

結局、年収を見るときに何を見ればいいか

公的データから実際に読み取れることは限られています。確実に言えるのは次の点です。

  • 設計側と実装側で差がある。 ITシステム設計技術者の分類(889万円)と、ソフトウェア開発技術者WEB・オープン系の分類(578.5万円)には約310万円の開きがある
  • ヘルプデスクは平均年齢が高く年収は中間。 609.8万円・42.2歳で、求人賃金は29.0万円と掲載職業のなかで最も低い
  • 労働時間にも差がある。 設計側の分類は月173時間、実装側は月159時間で、月14時間の差
  • 求人倍率は職種で大きく違う。 受託開発SEの2.54に対し、ITコンサルタントは0.88

逆に、公的データから言えないことも明確にしておきます。

  • SES・社内SE・自社開発それぞれの平均年収
  • 受託開発と自社サービス開発の年収差
  • 「SESは中間マージンが引かれるから低い」という主張の統計的裏づけ

これらを断言している情報を見かけたら、出典と集計条件を確認してください。 出典が示せないなら、その数字は根拠がありません。

よくある質問

Q. なぜ「SESの平均年収」の記事があんなに多いのですか? A. 各社が自社の登録者データや独自アンケートを集計しているケースと、出典を示さずに書いているケースがあります。前者は母集団がそのサービスの利用者に限られるため、業界全体の平均ではありません。読むときは集計条件の記載を確認してください。

Q. job tagの数字は信用できますか? A. 出典は令和7年賃金構造基本統計調査という国の基幹統計であり、信頼できます。ただしjob tagの職業名と統計の職業分類は1対1ではないため、「その職業だけの数字」として読むと誤ります。job tag自身が各ページでその旨を注記しています。

Q. 自分の市場価値はどう調べればいいですか? A. 平均値は分布の中心を示すだけで、個人の評価額とは別物です。実際の提示額を知りたい場合は、求人票の年収レンジを職種・言語・勤務地の条件で絞って見るほうが具体的です。スカウト型サービスに登録して実際に届く提示額を見る方法もあります。

Q. 単価から年収を計算できますか? A. 単純な12倍は実態と合いません。稼働が途切れる期間、消費税の扱い、社会保険料の全額自己負担、経費と確定申告の手間などが影響します。エージェントの公表値は「週5で稼働し続けた場合」を前提にしていることが多いため、注記を必ず確認してください。

この記事の出典

厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)

上記各ページに掲載の統計の原典は、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(年収・平均年齢・労働時間)、総務省「令和2年国勢調査」(就業者数)、厚生労働省「令和7年度ハローワーク求人統計」(有効求人倍率・求人賃金)です。

単価データ

いずれも2026年8月31日に閲覧しました。本記事の数値は上記ページに掲載されていた表記を引用したものです。統計は更新されるため、閲覧時点の数値と一致しない場合があります。平均値は個人の年収を保証・予測するものではありません。最新の情報は必ず各出典元でご確認ください。

本記事の内容は2026年8月31日時点で確認できた公開情報にもとづいています。各サービスの条件は変更される場合がありますので、 最新の情報は必ず提供元の公式サイトでご確認ください。また、本記事にはアフィリエイトリンクを 含む場合があります。